ぽっちゃりナースですが、天才外科医に新妻指名いただきました

 病棟が忙しいということは、進藤先生も忙しいのだろう。先生には外来診療の日もある。

 病棟の患者のところを回り、すぐに戻っていく姿を何度か見た。きっと外来診療とオペ、その他の仕事の合間を縫って来てくれたのだろう。

 単に忙しくて時間がとれないならいい。

 けど、いきなり冷静になったのだとしたら。

 私と婚約するなんて言ったのは一時の気の迷いで、なにかのきっかけで夢から覚めた、なんてことだったら。

 正直、私はがっかりする。「ほらね」って言いながら、少し泣いちゃうかもしれない。

 日曜にお見合いして、次の日にキスされて(あ、日付変わってたから、厳密に言えば翌々日か)。金曜日には、先生のことばかり考えている。

「ああー、ダメですよう!」

 夕方、転倒防止のためにつけてある離床センサーが鳴った部屋に行ってみると、高齢の男性患者が自分で点滴の針を抜いていた。

 カーテンやベッド、床に血が飛び散っている。

「大事な点滴、抜いたらダメですよ」

 自己抜針後、気づかれるのが遅くて出血多量で亡くなった例もある。

 しかし相手は認知症。抜いては危険なのだとわからないのだから仕方ない。

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