若き社長は婚約者の姉を溺愛する
妹の襲来
 挨拶から一週間ほどたった梅雨が明けた日。

 『沖重買収!』
 『新社長は宮ノ入グループから!』――という経済新聞の内容もだいぶ落ち着いてきた。

 私はようやく会社へ行けるようになり、休んで迷惑をかけたことやゴタゴタに関して、謝罪して回ったけれど、逆に恐縮されてしまった。
 だいたいの成り行きはすでに説明されているらしく、『大変だったね』と『おめでとう』がワンセット。
 どうやら、梨沙が宮ノ入本社まで押しかけてきたあたりから、社員たちはなにか大変なことが起きていると察したらしい。
 梨沙が社長に無理矢理迫っている姿、私の持ち物を奪いにきたことなど、異常さに気づき、私のことを心配してくれていたそうだ。

「木村さん。本当にありがとう」

 木村さんが気づき、守ってくれた私の所持品。
 たくさんあったのに、それを全部、保管しておいてくれたのだ。

「いいえ。リアルでもこんなことがあるんですね。みんなで砦を死守する一体感を味わえました」
「……え? 砦?」
「あっ! なんでもないです。先輩が無事で安心しました」

 木村さんは私の荷物を自分のロッカーから取り出しながら話す。
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