【コミカライズ】若き社長は婚約者の姉を溺愛する《宮ノ入シリーズ①》【番外編更新】
どんっとシートに体を押し付けられ、低い声が頭の上から降ってくる。
怖くて涙がこぼれたけど、八木沢さんは冷たい目のままだ。
思えば、この人が、本当に優しい目をしたところを見たことがない。
震える指で、スマホに触れ、助けを求めた。
「た、助けてください……。わ、わたし……」
『美桜? なぜ、直真の番号から?』
八木沢さんが笑う声が、耳のそばで聞こえた。
「瑞生と呼べと、言われていたよな?」
命じる声は低い。
「た、瑞生さん! 瑞生さん、助けてください! 八木沢さんに連れ去られて……」
そこまで言うと、八木沢さんは私の手から、スマホを奪った。
「美桜さんをからかいすぎました。すみません」
『そうか。後から詳しく聞く。事によっては、一発殴らせろ』
「顔は許してください。いろいろ便利に使えるので」
自分の顔を『使える』と表現するあたり、まるで自分自身を道具としか思ってないような気がした。
「驚かせてすみませんでした」
にこやかな口調なのに、黒さが滲み出ている。
――善人ではない、この人は。
「美桜さんが、今日は昼食をご一緒したいそうです。ホテルランチを予約しましたから、そちらでどうぞ」
「わ、わたし?」
「そうでしたよね? 美桜さん?」
瞳の鋭さに体が震え、小さい声で頷いた。
「は、はい……」
私の緊張した声に気づいたのか、返ってきた社長の声は低かった。
『直真。しばらく、その顔を使えなくなるな』
「ちょっと、ふざけただけなんですけどね」
優しい態度に戻った八木沢さんは、私の涙をハンカチでぬぐう。
いつものように八木沢さんは微笑んでいたけど、私は少しも笑えなかったのだった――
怖くて涙がこぼれたけど、八木沢さんは冷たい目のままだ。
思えば、この人が、本当に優しい目をしたところを見たことがない。
震える指で、スマホに触れ、助けを求めた。
「た、助けてください……。わ、わたし……」
『美桜? なぜ、直真の番号から?』
八木沢さんが笑う声が、耳のそばで聞こえた。
「瑞生と呼べと、言われていたよな?」
命じる声は低い。
「た、瑞生さん! 瑞生さん、助けてください! 八木沢さんに連れ去られて……」
そこまで言うと、八木沢さんは私の手から、スマホを奪った。
「美桜さんをからかいすぎました。すみません」
『そうか。後から詳しく聞く。事によっては、一発殴らせろ』
「顔は許してください。いろいろ便利に使えるので」
自分の顔を『使える』と表現するあたり、まるで自分自身を道具としか思ってないような気がした。
「驚かせてすみませんでした」
にこやかな口調なのに、黒さが滲み出ている。
――善人ではない、この人は。
「美桜さんが、今日は昼食をご一緒したいそうです。ホテルランチを予約しましたから、そちらでどうぞ」
「わ、わたし?」
「そうでしたよね? 美桜さん?」
瞳の鋭さに体が震え、小さい声で頷いた。
「は、はい……」
私の緊張した声に気づいたのか、返ってきた社長の声は低かった。
『直真。しばらく、その顔を使えなくなるな』
「ちょっと、ふざけただけなんですけどね」
優しい態度に戻った八木沢さんは、私の涙をハンカチでぬぐう。
いつものように八木沢さんは微笑んでいたけど、私は少しも笑えなかったのだった――