attraction
April

「……新しく卓球部の副顧問をすることになった幸村(ゆきむら)です。一年間よろしく」


終始無表情な幸村先生は、なんというか、機械のように自己紹介をした。

正直、関わりたくないと思ってしまうような、そんな。

先生というものは生徒に対して愛想がいい生き物だと勝手に思っていたから。

新任の男の先生だったら、たくさんの女子生徒たちに囲まれてにこにこしたり鼻の下伸ばしたり。ってただの偏見か、というか少女漫画の読みすぎ?

さすがにここまで無表情で無愛想だと......モアイ像に見えてくる。

それに、言葉に棘を感じる。

悪口を言われてるわけでも説教されているわけでもない、ただの自己紹介のはずなのに、不思議なことに『いつもの感覚』と錯覚してしまう。

......SF小説になら、きっとこういう能力持った人いるんだろうな。言葉で相手の感情を操作できちゃいます、みたいな。

周りの環境から勝手に身についてしまったものなのか、意識的に身につけたものなのかはわからないが、反射的に、

幸村先生が苦手だと、怖いと、そういう対象として見るようになってしまった。

でも、きっと関わることすらないんだろうな。

最後の大会まで半年もないんだし、私は今まで通り部活に出て、なにも文句言わないいい子ちゃんレギュラーとして試合に出て、適当に勝って、適当なところで負ければいいんだから。

幸村先生が...というか新しい顧問が増えようと、そうでなかろうと、大して何も起こらない。

そう思っていた。

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