きみと、どこまでも堕ちていきたい


「二階堂さんって大学時代は演劇部だったんですね」

「そうなんだ。何度か俳優になろうか考えたんだけれど、さすがに現実的ではないし、就職したけれどね」

「二階堂さんみたいに、性格も良くて格好よかったら人気でそうですけれど」

「ははっ、持ち上げすぎだよ。滝川さんは褒め上手だね」

二階堂と食堂でご飯を食べながら、お互いの話をして談笑する。
私はゆっくりとご飯の箸を進める。
正直、お姉ちゃんを殺した男を目の前にして、食欲なんてわくわけがないが、食べないわけにもいかない。

「そうだ、連絡先教えてよ。部署のみんなが入っているグループトークに招待するから」

「もちろんです。少し待ってくださいね」

私は携帯を操作して、連絡先の書かれた画面を二階堂に見せる。

「これです」

「ありがとう」

そう言って二階堂に携帯を差し出したタイミングで、二階堂の手が私の手に触れる。

「…あ」

「ごめん」

「いえ…」

そう言って、私は二階堂にときめいたふりをする。
もちろん、手が当たったのもわざとなんだけれど。

ああ、気持ち悪い。
あとで徹底的に手を洗おう。
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