それは夕立とともに
 何年も前に迷信としか思えないジンクスが広まり、女子の中では知名度が高かった。結果は半々のようだが、試しにそのご利益にあやかってみようと考えたのである。

「はは。馬鹿みてぇ」

 自らの行動を思い返して乾いた笑みがもれた。

 うさんくさいと思いながらも、結局のところはそんなおまじないに(すが)り付くしかないのだ、俺は。

 好きな相手と両思いになりたい。けれど告白への一歩が踏み出せないのは、想い人が俺より四つも年上で対象外という空気をありありと醸し出しているからだ。

 彼女はクラスで常時つるんでいる相崎(あいざき) 翔琉(かける)の姉でもあり、三ヶ月ほど前から親に無理やり付けられた家庭教師でもある。

 苦手な国語と古典を教えてくれる彼女と雑談をした時、偶然友達の姉だと知ったのだ。

 週一で予定している家庭教師が来るのは今日だ。

 栞里(しおり)ちゃんと私生活(プライベート)でも仲良くなって、段階を踏んでから告白しようと最初はそう考えていた。でも現実はそう上手くはいかない。

 彼女は今もそうだが、俺となかなか目を合わせようとしないし、家庭教師の時間以外は大体俯いている。

 ーー俺。嫌われてんのかな……?
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