京都、嵐山旅館の若旦那は記憶喪失彼女を溺愛したい。
☆☆☆

春菜は駅員さんに体を揺さぶられて目を覚ました。


大慌てで下車したものの、まだアルコールが残っていて足元がふらつく。


アパートまで歩けそうにないのでタクシーに乗ろうと思ったが、いつもの駅となにかが違う。


タクリー乗り場ってどこだっけ?


疑問に感じながらふらりふらりと体を揺らして歩いていく。


春菜の後方に遠ざかっていく駅は、嵐山駅だ。


ここは自分の住む街ではないと気が付かないまましばらく歩き、そして路地へと迷い込んでしまった。


なんだか楽しいそうな場所だな。


大きな建物が沢山あって、人が沢山歩いてる。


だけど今の春菜はそれをちゃんと確認することもできなかった。


迷い込んでしまった路地から抜け出そうと歩き回っていたとき、ふいに足が絡んだ。


あっと思ってももう遅い。


春菜の体は後ろ向きに倒れ込み、そこに運悪く割れたブロックがあったのだ。


春菜は後頭部を強く打ち付けて、そのまま意識を失ったのだった。
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