京都、嵐山旅館の若旦那は記憶喪失彼女を溺愛したい。
「素晴らしいですね」


1人で鏡の清掃を終えた時、後ろから純一が驚いた声を上げた。


春菜が磨いた鏡はどれもピカピカに輝いていて、曇ひとつない。


「もしかして清掃員をされていたんじゃないですか?」


「どうでしょうか……?」


思い出そうとしても頭が痛くなるので、首をかしげるにとどめておいた。


もし自分が清掃員の仕事をしていたのだとすれば、旅館の清掃をしている間に自然と思い出すことがあるかもしれない。


現に今、春菜の体は自然と動いていたのだから。


「じゃあ次は客室の清掃へ行きましょう」


春菜は頷いたのだった。
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