京都、嵐山旅館の若旦那は記憶喪失彼女を溺愛したい。
湯上がりの純一は暑いのか浴衣の前を少しだけはだけさせていて、その肌を汗が流れていた。


タオルドライしただけの髪の毛は濡れていて、水滴が滴り落ちていく。


あまりにもセクシーで春菜は思わず見惚れてしまった。


「どうしました? もしかしてのぼせましたか?」


またしても顔が赤くなっていたのだろう、純一が心配そうな顔になってしまった。


ついさっきみんなに心配かけないようにと決めたのに、これじゃダメダメだ。


「大丈夫です。のぼせてはいませんから」


慌ててそういうと、純一がベンチの横に設置されているアイスケースから、クリーム系のアイスを取り出して春菜に渡してくれた。


お風呂に入った人に無料で提供しているものだ。


「ありがとうございます」


アイスを受け取り、ベンチに座って2人で食べる。


こうしているとカップルの旅行に見えるんじゃないかと思って、どきどきしてきてしまう。


「ついに明日ですね」


純一がアイスを食べながら聞く。


「そうですね」


「緊張していますか?」


「少しだけ」


春菜は素直に答えた。


その時、ベンチに置いていた左手に純一の右手が触れた。


そのまま握りしめられる。
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