京都、嵐山旅館の若旦那は記憶喪失彼女を溺愛したい。
別れ話をするにしてももう少しタイミングというものがあるはずだ。


なぜ今日、この場所でなのか春菜は疑問でならなかった。


それほどまで早く別れたかったのかと黒田を恨んだりもした。


まだ時刻は早かったが、別れ話の後で楽しく遊園地デートなんてできるはずもなく、そのまま帰ることになてしまった。


帰りの電車の中でも2人は終始無言で、気まずい雰囲気が流れていた。


それでも黒田は時折スマホを確認しては頬を緩めていたのだ。


きっと、次のお相手とメールでもしていたのだろう。


モヤモヤとした嫌な気分のまま帰宅した春菜はお酒でも飲んで忘れてやろうと思ったが、翌日も仕事があったのでそれもできないままだった。


突然振られたショックと黒田の冷たい態度を思い出して眠れないまま出勤することになってしまった。
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