恋する乙女の下着事情

運動会での出来事

＜運動会当日・グラウンド脇＞

その日は快晴で、
社内運動会は盛り上がっていた。

小さなわが子の走る姿に、
多くの親が目を細め、
子の名前を連呼して、ビデオ撮りをしている。

時折、
大きな歓声があがる。
もうすぐ終わるだろう。
太陽が傾きはじめている。

あとは、保育園の子どもたちが、
お遊戯を披露して終了になる。

リノアは、もうすでに疲れて
ぐったり眠っている子どもを
おんぶして、会場脇を歩いていた。
この子の親が、
どこにいるのかわからない。
困ったな。
駐車場のほうも探そうか？

大きな木の幹によりそうように、
長身の男性が立って、グラウンドの方を見ていた。

「あ・・」
あの支社長だ。
挨拶をしなくてはならない。

リノアはおぶっている子どもを
ゆすり上げて近づいた。
「このたびは・・いろいろご配慮していただいて・・
ありがとうございます」

リノアが頭を下げたため、
こどもが落ちかかった。
「おっと、危ない！」
支社長がこどもを支えてくれた。

「ああ、ごめんなさい。あの・・」
リノアはこどもを、
正しい位置にゆすって戻したが、
子どもは、本当に疲れているのだろう、
まったく起きる気配がなかった。

大きな木の下で、
支社長とリノアは並んで、
グランドの方を見るように立った。

こどもの歓声と親の声援が混じり、響く。
不意に、
支社長が言葉をかけた。
「今回のイベントは会社としても
大切なことだと、気が付かされた。感謝している。」

支社長は
にぎわっているグランドを、
ずっと見続けていた。

「あの、こちらこそ・・」
リノアが言いかけた時・・
「俺はこういう事に、うといから・・」
支社長は独り言のように、つぶやいた。

すぐそばを、父親と母親の間、
両手をつないだ小さなこども、
３人が通り過ぎた。
こどもはうれしそうに親の顔を
見て、笑っている。

「家庭がよくわからないな・・」

＜この人は何を言いたいのかな＞