10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~

「そうだね」
「先生も、すごいドキドキしてる……?」

 先生の胸は私以上に早鐘を打っていた。
 先生も……こんな風になるの? 私だけドキドキしてたんじゃないの?

 そう思って先生を見上げると、先生は少し困ったように笑って、

「そうだよ。果歩に触れる時、触れられた時、いつだってこうなるんだ」

と言って続ける。「触れるのも気持ちいいと思わない?」

 そう言われて、確かに、と思った。

 先生に触れるの……嬉しいし、気持ちいい。
 前より、大和先生と一緒にいる気がする……。

(だから先生も触れたいって思ってるの?)

 けどそれは口には出さなかった。……何だか嫌な予感がしたから。
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