10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~

 手を何度も振り解こうとしたけど、島原先生の手の力は強くて動かない。
 島原先生はまったく気にしないように、そのまま私を連れて、医局に入っていった。

 そこには、大和先生が一人でいた。私たちを見るなり、大和先生はたいそう不機嫌そうに眉を寄せる。その様子に、私は緊張でごくりとつばを飲み込んだ。
 なのに、島原先生はそんな大和先生の様子も、私の様子も、気にもせず話し出す。

「今日、果歩ちゃんと二人で飲みに行くんだけど、大和も来る?」
 また不機嫌そうに大和先生の眉がピクリと動く。

「あの……大和先生忙しいだろうし、ご無理せずに」

 私が口をはさむと、島原先生は私に耳打ちする。
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