10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~

 今までも見られていないところも、触られていないところもなかった。
 でも、先生はいつもより性急な動きで、見たことないくらいギラギラした目で私を見る。そうされると何故か急に恥ずかしくなって視線をそらした。

 先生はそんな私を許さないと言うように、私に自分の方を向かせる。
 そうされて先生の少し硬い指先が身体を這うたびに、私はいつも以上に身体がビクビク跳ねた。

 先生は貪欲にそれ以上に反応する場所を探り当てて、何度も何度も覚えさせるように私を快感の波に乗せる。
 すると、私はその波からはもう降りることはできなくて、どんどん高いところに行くしか道はなくなった。

 感じたこともない高すぎる快感が怖くなって先生の背中に腕を回して、ぎゅう、としがみつく。

「先生」
「名前、呼んで」
「や、大和さんっ!」

 私が呼ぶと先生は目を細めて、うん、と返事をして、汗の滲む額にキスをしたあと、唇に何度もキスをした。
 先生はわかってる。キスをしたら安心することも、もっと気持ちよくなることも……。
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