10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~
「なんでそんな嘘ついたんですか! ……も、もしかして、暗示……かけてました?」
私が言うと、大和先生は困ったように笑って顔を横に振った。
「ううん、俺には暗示なんてできないよ。方法ならどちらも知ってるけど。できるのはイチゴ味でないものをイチゴ味だと思わせるくらい。それは世の中のほとんどの人が可能だ」
「ふぇ……?」
(あれ? 暗示じゃないの?)
じゃあアレをくれたのは、たまたまだったのかな。
「果歩ももう、大人ってことだよね」
「……? 大人ですけど」
「はは、うん。そうだよね。大人相手でないとこんなことできないし」
大和先生は苦笑して私の耳の後ろに顔をよせる。熱い息が耳にかかって、身体がビクンと跳ねた。
「そういえば、果歩はいつも甘い匂いがするな」
「い、いや、今、絶対そんな匂いしないでしょう! 汗臭いからやめてくださいっ」
私が慌てて身をよじると、先生は楽しそうに「やめない」と言って、そのまま唇をふさいだ。その甘いキスに溺れて、私もまた目を瞑る。
―――私やっぱり、大和先生とこうしている時間が好きなんだ。