10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~
「果歩」

 私を呼ぶ低い声。
 その声を聞くと、私の胸はギュウ、と締め付けられるように痛くなる。


―――私だってとっくに狂ってる。

 いつだってこのキスに。大和先生の声に。目に。その注がれる愛情に……。

 自分も同じように彼を愛しているのだ。

 その日、何度もキスを交わして抱き合ってる間、『好きだよ』『愛してる』って、何度も何度もお互いに伝え合っていた。

 まるで、お互いに暗示でもかけるかのように……。
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