花嫁も大聖女も、謹んでお断り申し上げます!
「レオン様、モースリーにお戻りください」
「それならエミリーも……いや、それはまだだめだ」
いつ渡そうかと朝からポケットに忍ばせておいた小さな巾着を取り出し、葛藤するレオンへと両手で差し出した。
「私はもう少し力が安定して、元の姿を取り戻すまでここにいます。でもこの心は貴方と共に」
「これは?」
巾着の中身はバングルで、浄化と回復の複合効果が付与された魔石がついている。
「私の最高傑作よ」と笑みを深めたエミリーをレオンはぎゅっと抱きしめた。
「わかった。王子の勤めを果たしに行ってくるよ」
「お気をつけて」
レオンが怪我をしてしまったらと考えれば胸がきゅっと苦しくなる。
心の中にある不安を押し隠すように、エミリーも力一杯彼を抱きしめ返したのだった。