【完結】ドSな救命医に見初められ、婚姻関係を結びました。


 俺がそう言うと、さくらは「それはよかったです。 あ、朝ご飯食べますか?」と聞いてきた。

「じゃあ、食べるか。せっかくだし」

「じゃあ用意しますね」

「ありがとう、さくら」

 さくらは嬉しそうに「いえ」と答えると、トーストを焼き始めた。

「そういや、この前の患者……まだ目を覚まさないのか?」

 楠海浜病院に緊急搬送されてきた50代の男性。すすきの総合病院でも他の患者を受け入れていて、受け入れられず、楠海浜病院に搬送された。
 すでにギリギリの処置で一命は取り留めたが、未だ意識が戻らないらしい。

「いえ……。バイタルは安定していますが、意識は戻らないままです」

 さくらはトーストにジャムを塗りながら、小さな声でそう呟いた。

「……そうか」

「毎日、奥さんと子供がお見舞いに来てるんです。……だけどその度に、わたしは苦しくなるんです」

 そう言ってさくらは、ジャムを塗る手を止めた。

「……どうにかして助けてあげられないのかなって、そう思ってるんですけど」

「さくらはやるべきことをやった。……医者として、精一杯やったよ。 悔しい気持ちもあるだろうけど」
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