【完結】ドSな救命医に見初められ、婚姻関係を結びました。

⑧夫婦の距離

　それから数日経った頃、篠田さんはその後の容態も安定したため、退院の手続きを取った。
　そしてその日の午後、篠田さんを警察に引き渡すため、わたしは篠田さんを病院の外へと連れ出した。

「篠田さん、くれぐれも体には気を付けてください。一度死にかけているんですから」

「……はい。分かりました」

「お願いですから、無茶だけはしないでくださいね」

　篠田さんをこれから警察に引き渡さないとイケないだなんて……。なんだか残酷すぎる気がした。
　でもこれは、仕方のないことだから……。

「……ありがとうございました。こんな俺を、助けて頂いて」

　篠田さんの言葉には、何か重みのある何かを感じた気がした。

「こんななんて、言わないでください」

　そしてわたしは、そう言葉を返した。

「……え？」

「こんななんて言ってはダメですよ。……篠田さんは生きたんです。自分の力で、生きようと努力したんです。　こんななんて言ったら、悲しいです」

　わたしが医者として出来ることなんて、限られている。
　けどそれでも、篠田さんには生きていてほしい。どんな人生になろとしても、生きていてほしい。