【完結】ドSな救命医に見初められ、婚姻関係を結びました。
北斗さんが救急隊の元へと歩き出した後、わたしは「良かった……」と呟いた。
「さくら先生、良かったですね」
だけど同時に……自分が何も出来なくて、怖くて震えてしまったことへの罪悪感に、駆られてしまった……。
「……何も、出来なかった」
あの患者さんを助けたい一心で、わたしは必死だった。……けど、いざとなった時に助けられる自信なんて、わたしにはなかった。
「さくら先生……」
「何も……。何にも、出来なかった……」
ただ困惑して、焦ってるだけで、何も出来なかった。……悔しくて仕方なかった。
「さくら先生は、よくやってくれましたよ。……さくら先生がいなければ、あの患者さんは助からなかったですし」
本田さんの言葉は、わたしにとって少しだけど、心を軽くしてくれた気がした。
「……悔しい」
わたしの手で、最後まで助けたかった……。
「さくら先生……」
「……すみません。救護室の患者さん、見てきますね」
わたしは涙を拭うと、その場から立ち去った。
そしてそんなわたしの後ろ姿を、北斗さんは辛そうに見つめていたのだった……。