sugar spot
#1.「天敵に塩は送らない」

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「梨木さんの席は、ここね。」

「あ、はい…!」



営業部に配属されて、初日。

フロアの皆さんへの挨拶を済ませた私は、部長に連れられて営業部第一課の島へ案内された。


…凄い、自分のデスクだ。


目の前でそれにそっと触れつつ、高揚感の中に身を置いていると、「梨木さん」と隣から凛とした声がかかる。


そうして振り返ると、そこにはすらっとしたパンツスーツスタイルで、艶やかな黒髪を1つに束ねた、綺麗な女性。


目鼻立ちのはっきりした彼女は、それを余すことなくへらりと緩めて私に笑いかけた。


「営業部4年目の、枡川(ますかわ) ちひろです。

梨木さんの隣のデスクです。
あの、何か分からないことあったら本当に、何でも聞いてください。」

「枡川の方が緊張してどーすんだよ。」

「え、バレてます?」


周りの同僚の方々にそう突っ込まれて、少し恥ずかしそうに笑った彼女を見ていると私はジワリジワリ、心にあったかいものが浸透していく。





____嗚呼、本当に、会えた。



じっとただ見つめるだけの私の視線に気づいた彼女は、再度「梨木さん?」と呼ぶ。



「初めまして、梨木 花緒です…!!!枡川先輩、これからどうぞよろしくお願いします…!!」


思ったより大きなボリュームの声になってしまった。

その恥から、顔が赤みを帯びるのに気付いたけれど、気にせずそう続けてガバリとお辞儀をする。


「こちらこそよろしくね。」

するとふわっと笑って、そう言ってくれた。
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