金平糖の甘い罠
里帰り

 夏の高校野球が終わり秋の気配を感じる頃、恵は臨月に入っていた。
もういつ産まれてもおかしくない時期になっていた。恵は鈴と実家へ帰った。
涼は束の間の一人暮らしになる。

「陣痛がきたら連絡するね。たまには家の掃除もしてね。」

「分かった。恵、出産頑張って!」

 なんとなく頭の片隅にほんの少しの不安を残し、マンションをあとにした。

 実家に帰ると母親がご飯を作ってくれて洗濯もしてくれる。
一瞬にして主婦から解放された気分だ。

「だらだらしてないで、ちょっとは動きなさいよ!」

「恵、早く寝なさい!何時まで起きてるの?」

 あまりのだらしなさに母親から昔ながらの雷が落ちる。

「分かってる!」

 とは言うが、どうしても実家に来るとここぞとばかりに甘えてしまう。
 主婦は365日休みなく働いている。たまにはご褒美にこんな日があってもいいはず!
 恵はそう言い聞かせて出産までの日々を自由気ままに過ごしていた。


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