金平糖の甘い罠
新築マンション

月日は過ぎ、鈴が2歳になった頃、新築マンションを購入する事になった。
それはある日不動産屋が恵の家を尋ねてきた事から始まった。
いわゆるセールスだ。

今の暮らしには充分に満足していた。
何不自由ない生活と恵まれた環境。
ただ、新築マンションという憧れもあった。3LDKの広いマンション。
正直今のハイツは3人家族でも少し狭くは感じていた。

不動産屋が提示してきたマンションは、
今のハイツから車で十分ほどの場所にあり、広いリビングに隣接した和室、奥には6畳の部屋が2つあり、ウォーキングクローゼットまで付いている。
何度も不動産屋が恵の家に足を運んだ。

恵も少しずつ心を動かされていった。


「このマンションがいい!」

 マンションの内装はもちろん気に入っていたが、
 恵はペーパードライバーのため、駅まで徒歩10分以内という条件と、子供が通いやすい学校の距離、過ごしやすい環境などを考慮した。
 全ての条件が当てはまっていた。

 一軒家派だった涼は、せめて庭が欲しいと交換条件を求めてきた。
 涼はずっと子供の頃から団地暮らしで、一軒家に憧れがあったからだ。


 庭は手入れが面倒だな…
 虫も多そうだし…

 
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