40歳88キロの私が、クールな天才医師と最高の溺愛家族を作るまで
撮影をした後、私と氷室さんはそれぞれクリームソーダに口つけた。
私はくまさんで、氷室さんはパンダさん。
クールな表情で、パンダさんをうまく避けながらソーダ水を飲んでいるのが、少し面白い。

(やっぱり……)

もし違っていても、これなら変に気遣われることもない。

(こんなイケメンとなんて、もう二度と喫茶店になんて来ないだろうし)

私は、思い切って、気になる事を色々聞いてみよう……と思った。

「甘いもの……お好きなんですか?」
「変ですか?」
「どうして、そう思うんです?」
「女性の方々は、俺が甘いものを食べることに違和感を感じるみたいで」
「確かに氷室さん、意識高い系の食事してそう。医者だし」
「職業も関係あるんですか?」
「イメージの押し付けじゃないですか?あとはゲームとか漫画でのキャラ付けとか。でも氷室さんのような男性が甘いもの好きだなんて、ギャップ萌えでいいと思いますけど」
「ギャップ萌え……とは?」
「それはですね……」

このように、私と氷室さんは、たわいもないおしゃべりを楽しんだ。
ソーダ水の氷が、完全に溶け切ってしまうまで。

「そういえば、先ほどの写真はどうするんですか?」
「見ます?」

と聞きながら、私はスマホに自分のSNSの画面に表示させた。

「こんな風にSNSに投稿する予定です」

まじまじと、不思議そうに画面を眺めながら

「素敵ですね」

と、聞く人によっては、爆弾にもなりうるセリフを、氷室さんは吐いた。

「あ、ありがとうございます」

私は何事もない風に装ってはみたけれど、内心は

(別に!自分の容姿とかが褒められたわけじゃないのに、何照れてんの!)

と、狼狽えていた。

「これは?」

氷室さんが画面を指差したのは、SNS映えを意識したカフェラテの写真だった。

「私の最寄駅にあるカフェなんですけど……メルヘンな雰囲気が人気なんですよね。私も気分転換にここでラテを飲みながら、読書することもあるんですよ」
「へえ……」
「興味があるなら連れていきましょうか?」

(なんてね。言ってみたかっただけだし……)

こういうのに興味があるからと言って、氷室さんにはきっと、他に一緒に行きたい人がいる確率の方が圧倒的に高いだろう。
本命彼女とか。

「場所なんですけど……」

と、私は自分のメモ帳に住所と行き方を書いて、渡そうとした。
ところが……。

「行きます」
「……へ?」
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