40歳88キロの私が、クールな天才医師と最高の溺愛家族を作るまで
「体調が悪いなら、俺に言ってくださいと……朝言ったじゃないですか」
「それ……は……」
「何故、黙ってたんですか?」
「だから、それは……」
「俺は、医師です。でもエスパーじゃない。あなたに訴えてもらわないと、俺は診断することもできない」

そう訴えかけてくる氷室さんの熱い眼差しに、私は本音を隠し切れなくなった。

「……嘘です」
「え?」
「体調が悪いなんて、嘘です」
「何故、そんな嘘を……」
「私みたいな……おばさんで、デブで……オシャレのセンスもなくて、氷室さんに気の利いたこと1つ言えない私なんかが、氷室さんとこんな場所にいるのが、なんだか申し訳なくて……」

氷室さんは、黙って私の話を聞いていた。

「ごめんなさい。家に帰してください。これ以上情けない顔、見られたくないです……お願いします……」
「言いたいことは、それだけですか?」
「え?」

氷室さんはそう言うと、その場で手をあげた。
タクシーが止まり、扉が開くと、私は氷室さんによって、中に押し込められた。
続いて氷室さんも乗り込む。

「すみません、今から言う場所に向かってもらってもいいですか?」

氷室さんはスマホを取り出すと、川越から始まる住所を伝えた。
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