40歳88キロの私が、クールな天才医師と最高の溺愛家族を作るまで
その人の仮説がもし正しいのであれば……俺に対して恋愛相手として彼女が意識している可能性が、十分にあるということでもある。

何とかして、少しでも距離を縮めたい。
願うなら、彼女に俺の気持ちを知って欲しい。
受け入れて欲しい。

その思いが膨らみ始めたタイミングが、まさに今だった。

「森山さん、その雑誌は……」

あえて俺は、その雑誌の内容を知らないフリをして、話しかけた。

「川越の。縁結びで有名みたいですよ」

優花から、縁結びという言葉が出たのを、俺は逃さなかった。

「いつがいいですか?」
「……いつが良い……とは?」

俺が無理にでも川越の予定を決めようとしたからだろうか。
彼女は戸惑いを隠せていなかった。
分かっていたが、俺も引くわけにはいかないと、押した。
そうして、最終的には彼女の趣味……SNS映えする写真が撮れるというメリットを提示することで、ようやく頷かせることはできた。

それからの俺の行動は、早かった。
この時を特別な日にしたいと思った。
彼女にとっても……俺にとっても。
だからこそ、気合いを入れたかった。

どうやって彼女に俺をもっと異性として意識してもらおうか。
川越の神社の力を、どんな風に借りようか。
どこで食事をして……どんな風に告白をしようか。

きっと、他の男性であれば、子供の頃に体験するであろう、このソワソワとした気持ちを、俺は40にもなって、ようやく味わう事になってしまった。
女性の事で右往左往する自分がいるなんて、この歳まで知らなかった。
でも、そんな自分は、嫌いじゃないと思った。
彼女の為なら悪くない。

でも、まさかこの時は、当日彼女に逃げられることになるなんて、夢にも思ってなかった。
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