40歳88キロの私が、クールな天才医師と最高の溺愛家族を作るまで
最初はいつものカフェでの過ごし方と同じように、SNS用に食べ物の写真を撮ったり、ランチの感想を語り合うくらいだった。
食後に、お土産のケーキを食べ始めた時まで、あまりにもいつも通りすぎるので、口にするのも恥ずかしい、アレな展開になってしまうのでは……と想像したことが、樹さんに申し訳なかった。
何度か樹さんをチラ見したりもしたが……表情に変化はない。

(安心したような、少し寂しいような……)

と、自分勝手な事を考えながら、お茶を飲もうとケーキ用に準備したティーカップに口をつけるが、すでに空になっていた。
樹さん用に出したティーカップの紅茶も無くなりそうだった。
ティーバッグで用意してしまったので、ティーポットの準備はない。

「お茶のお代わり、準備してきますね」

私は立ちあがろうした。
だが、急いでいたのが良くなかったのだろう。
たまたま足元に転がっていたテレビのリモコンに足を取られてしまい

「きゃっ……!」

と、樹さんの体目掛けて思いっきりダイブしてしまった。

(ま、まずい……!!)

88キロの体で体当たりしてしまうなんて!?
樹さんの肋骨を折ってしまってないか、私は不安になった。

「痛くないですか!?」
「ん……平気……」

樹さんからの返答に、一瞬ホッとした。
だけど、私が謝るべきところは、それではなかったとすぐに気付かされた。
私が体当たりをしたことにより、樹さんは床に倒れる形になり、私が樹さんに跨っている状態になってしまったのだ。

「ご、ごめんなさい!!すぐに離れます!」

私は、慌てて樹さんの体から離れようとした。
でも……。

「行かないで」

樹さんは、それを許してくれなくて

「んん!?」

私の手を思いっきり樹さんが引っ張った。
かと思うと、そのまま樹さんに引き寄せられ、私の唇が樹さんの唇に重なってしまった。
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