地下一階の小宇宙〜店主(仮)と厄介な人達
夕方には、精肉店のかずよさん、いかついげんさん、雀荘の常連のたけさんが駆けつけてくれた。


かずよさん以外は佳乃が一人になったことを知っていて、様子を見に来てくれたのだ。


「すまん、仕事が抜けられなくて、遅くなった」

「佳乃ちゃんごめんね〜!
もうちょっと早い時間に来たかったんだけど!」


創太郎から日本を発つ直前に連絡があったようだ。

予定より早くスマトラに行くから、佳乃を頼むと言い置いて行ったらしい。



「佳乃ちゃん、朝商店街で会った時様子が変だったから見に来たら、なんだい!
そういう事だったのかい!
ほんっとにしょうもない男だねっ!!」


自分より怒ってくれる人を見ると、なんだか自分の怒りを吸い出してくれてる様で、気持ちがまた少し前向きになった。


「ありがとうございます! 本当に…。
心の支えです、みなさんは…!

未熟者ですが、精一杯頑張ります!
よろしくおねがいします!」


みんなは顔を見合わせてから笑顔を見せた。


「頑張り過ぎないようにね!程々に!
必死な佳乃ちゃんも可愛いけどね〜! 
ふんわ〜りほんわ〜かしてる佳乃ちゃんは無くさないでね!」


たけさんがいつもの様にクネクネしながら言った。

これも全て佳乃への気遣いと優しさなのだろう。


本当にありがたい。


これからは、この優しい人達や、アンカサへやってくるお客さんが笑顔でいられるように、自分が笑顔でいよう、と決心した。
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