地下一階の小宇宙〜店主(仮)と厄介な人達
あんなに重たかった荷物は、今や佳乃の両手に握られた缶詰2個と、ポケットの中のスマホと折り畳みの四角い財布だけという、
なんとも身軽だが、なんとも間抜けな様相を呈している。



初対面の出会いが最悪だっただけに、今日はぶっきらぼうながらも二度も助けられて、
ありがたいやら恥ずかしいやら、色々突然過ぎてまともにお詫びもお礼も言えなかった。



ーーー意外にいい子だったんだな…



自分も精神的に大きな衝撃を受けた直後だったので、かなり酷い事を言ってしまった。




ーーーまた、配達に来るかな。

次はちゃんと謝らなきゃ…



心の中で、大人としてあるまじき言動にしゅんと反省しながら、なるべく早歩きで商店街へと向かった。




やっと入口付近の隅っこに停めた自分の自転車の姿が見えると、何だかかなり遠くまで行って帰ってきた様な安堵感を覚える。



ママチャリの大きなかごの中には、あの男子高生が運んでくれた荷物でパンパンのトートバッグが入れられていた。



辺りには既に彼の姿はなく、商店街のお店の殆どが閉店してシャッターを降ろしている。




ーーーもうこんな時間か! 早く帰ろう…!



手に持っていた缶詰を前のカゴの荷物の上にバランスよく詰んで、やっと佳乃も自分の帰路に着く事ができた。

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