最愛の人に恋なんて出来やしない
はじめての友達…栗原くんは、私を忘れないと言ってくれて、私はその言葉を、迷うことなく信じた。

同じ学校の生徒が来ないような、少し遠いところによく行っては、いろんな話をしたり、キャッチボールやバドミントンをしたり、海辺で凧をあげたり…。

大切な友達と無邪気に遊んだ日々は、あとにも先にもこの年だけだったから、唯一の子供時代の楽しい思い出だ。

クラスの陰湿さは別として、栗原くんと過ごした日々は本当に幸せだった。


そして予想通り、また私は転校するときが来てしまった。

私は、クラスメイトには白々しいお別れの挨拶などする気になれなかったので、転校のことは栗原くんにだけ伝えたのだが、

「友達とのお別れがこれほどまで寂しいとは思わなかったよ…」

私は、この町へ来てから色々つらいことはあったけれど、栗原くんとの別れが何よりもつらくて、初めて涙を流した。

「俺だって寂しいよ…。だけど言ったろ?離れてもずっと友達でいるから」

栗原くんが小指を差し出したので、そっと指切りした。
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