最愛の人に恋なんて出来やしない
「俺は会社を継ぐ気は全くないんだ。あの父親の後継ぎになるために、これまで真面目に生きてきたわけじゃないし、政略結婚なんて冗談じゃない」

「栗原くんは、将来何になりたいの?」

「俺は…こんなこと言うと変わってると思うかもしれないけど、何になりたいというより、親とは関係を絶って、社長の子でも何でもない、平凡な男になりたいだけなんだ。恋愛したくないくせに言ってることが矛盾してるだろうけど、毎日真面目に働いて、もし叶うものならば…大切な人と暖かい家庭を築けたら、どんなにいいだろうなって」

しかし、親子の縁を切りたくても、法的にそれはなかなか難しい。

こんなことなら、認知されず私生児のほうがよかったと悲しそうに呟いた。

そして、何故女の子が群がってくるのが嫌なのかというのは、また面倒なことがあったという。

「実家の向かいに、ひとつ上の先輩がいてさ。彼は関西の有名私立大学に進学したと聞いてたのに、何故かうちの大学の同じ学年に居たんだよ。関西の大学は本命じゃなくて、仮面浪人していたとかで」
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