最愛の人に恋なんて出来やしない
栗原くん…ユタは、恋人のふりといっても、律儀というか紳士的だ。

人前で、どの程度までなら恋人みたいにしても大丈夫かも事前に聞いて、私の嫌がることは絶対にしないと誓い、私は、ユタが相手なら嫌なことなど何もないのが本音だったが…彼はいつも気遣ってくれた。

以前から、いつも車道側を歩いてくれたのには気づいていたけれど、恋人のふりで初めてデートした日、人混みの中、はぐれないようにと、しっかり肩を抱かれながら歩いたときには、激しい鼓動が聞こえないか心配にさえなった。

最初の頃は、ユタは大学の女の子たちに見せつけるように、敢えて学校の前などで、私を抱きしめて、

「ミーナは本当に可愛いな!愛してるよ!」

なんて言って、ふざけてくすぐってきたり、おでこにキスしたり…。

やはりドキドキしたけれど、これならば、本来の目的通りだな、という感じではあった。
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