噛み痕にキス
思うよりずっとふわっと軽く浮いたので驚く。井花の片足の上に乗せられた。
下から顔を覗かれる。眼鏡を取られた。
「俺はあると思うけど」
「胸?」
「いや、色気」
そこは嘘でも胸って言ってよ。
ベッドの海、という表現がある。
ベッドが海なら、あたしは泳ぐのが下手だ。
「……っ」
先程まで与えられていた愛撫なんかが全部吹っ飛ぶ痛み。
いや、傷み、か。
食いしばったら奥歯が砕ける気がして、自分の手の甲を噛んだ。
「伊丹」
は、と吐いた息と共にかけられた声に、ゆらりと視線を向ける。