愛してしまったので離婚してください
大学で外国語を学んでいた私。
でも全く持って慣れていない外国。荷物も届いていない何もない新居にたった一人。

それまで生きて来た中で一番孤独を感じた瞬間でもあった。

引っ越しの荷物の片付けも、新しい家具を選んだり購入するのも、すべて私は一人だった。

雅の荷物は驚くほど少なくて、でも触れてはいけない気がして、ずっと手を付けないまま部屋の中央に置いていた。隅に置くのも、どうかといちを気をつかった。

ニューヨークに来たその日、一瞬家にいた雅の姿はまるで幻だったのかと思うほど、それから雅は家に帰ってこなかった。姿のない雅の代わりに、私は雅の荷物が入った段ボールをながめることが多かった。

そのうち、段ボールに話しかけてしまうかもしれないとすら思っていた頃、雅が一度だけ家に帰ってきた。
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