ダンスの新星!!~私の秘密は元トップアイドル~
 ――ここまできたら、とことんやってやろう。私たちの自信作を体育祭で披露するんだ。

 律と新條が目配せすると、ダンス係も腹痛の演技をし始めた。
 はるな先生は呆れた顔になる。

「はぁ……。まったく、揃いも揃って……。ノロウイルスの集団感染かしらねっ。自宅で休みなさいねっ」

 はるな先生は律たちに背を向け、校舎に戻っていく。地べたに転がっていた新條が、くすくすと笑いながら起き上がる。

 律も同じように笑いが漏れた。こんなこと真剣にやってバカみたいだ、可笑しい。でも、やってやったぞ、という気分だった。

 新條が片手をグーにして親指を立てたジェスチャーを、律に向けた。新條の真似をして演技したことに「Good」と言いたいのだろう。
 律の顔がほころんだ。

「さあ、急ぐぞ。時間がねぇ」

 新條の言葉にダンス係の皆が、頷いた。

 誰も寄り付くことがない、校舎の西の端。薄暗く静けさが漂う。
 律は、誰もいない最果ての地にやってきたような心境になった。

「ここが理事長室……」

 ダンス係の皆が物怖じしているように見える。そうなっても仕方がない。扉だけでも、特別豪華な造りだ。
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