幼なじみの双子アイドルの推しが私なんてありえない!
いよいよ、歌とダンスの披露だ。



「選曲は、“ベルプリューム”さんで“Comme”です」



メロディが流れ始める。

合わせてステップを刻む私。


……唯斗くんと春馬くんのグループ“ベルプリューム”を選択したのには理由がある。

アイドルになりたいと思った原点だったから。

そして“Comme”を選んだのは、ベルプリュームのデビュー曲だから。

私の原点はベルプリュームで。

ベルプリュームの原点は“Comme”だから。


男性が歌っている曲だけあって、歌のキーを合わせることは難しかった。

だから少しアレンジを加えて、私らしさをアピールできるようにした。

たくさんの想いが詰まった曲。

ひとつひとつ大事に歌い、踊る。

そして、フィニッシュを迎えた。


最後の決めポーズまでやりきった!


私は姿勢を戻し、審査員の方々に一礼する。

最後まで私を見てくださりありがとうございます。

そんな想いを込めて。



「質問いいかな?」



今まで静かに見ていた審査員の方が手を上げている。

質問されるなんて思わなかったから驚いた。

他の参加者を見ていても、審査員から質問されることはなかったから。

驚きを隠しつつ、私は元気に返事をする。
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