ロート・ブルーメ~赤花~
 怒りを胸に残したままシャワーを終えたあたしは、用意されていた服を着る。

 でも身だしなみを整えてリビングルームに行き、紅夜の姿を見た途端怒りが収縮してしまった。


 うわっ、カッコイイ……。


 紅夜は黒のスーツに身を包み、髪型も前髪を上げるようにセットしていた。

 ネクタイは暗めの赤で、用意されていたあたしの服と同じ色だと気付く。


 あたしが今着ているのは赤いミモレ丈のワンピースだ。

 袖口には同色のレースもあしらわれていて、大人っぽさの中にも可愛さがある。


 普段と違った様子の紅夜と、そんな紅夜に合うように見繕われたワンピース。

 なんだかとても嬉しくて、わずかに抱いていた怒りなんて消えてしまった。


 紅夜はあたしを見つけると、嬉しそうに笑顔を向ける。

「美桜、その服似合ってる」

 端的な誉め言葉。

 でも、それでも嬉しい。


「紅夜も、似合ってる……よ?」

「ありがと」

 短くお礼を言った紅夜は、あたしに近づき何かを確認するかのように上から下まで眺めた。


「似合ってる。後で脱がすのが楽しみだよ」

「も、もう!」

 さっきシたばかりだって言うのに、まだそんなことを言うなんて……。

 紅夜はどんな体力してるんだろう。
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