ロート・ブルーメ~赤花~
「花って、どんな……?」

 でも紅夜はさらにそう聞いてくるから。

 だから、あたしはもっと具体的に話した。


「どんなって、赤い花。紅夜のピアスの色みたいな、真っ赤な花」

 答えて紅夜を見上げると、硬い表情をしていた。


 あれ? あたしまずい事言ったかな?

 やっぱり男の人を花に例えるとかおかしかっただろうか。


 そう思って謝ろうとしたけれど、紅夜は硬い表情のまま「行こう」と言ってあたしの手を引き歩き出した。

 そのまま無言で歩く。

 時間も遅くなり、周囲の喧騒が近づいてくる。


 今日は紅夜がいるから大丈夫と思えるけれど、その紅夜はずっと黙り込んでいる。

 怒っているとかではないみたいだけれど、なにかを真剣に考えているみたいで、話しかける事が出来なかった。


 でも紅夜の部屋に行くためのエレベーターに乗り込むと、彼はゆっくり口を開く。

「明日……」

「ん?」

「明日……美玲のところに行く前に、俺の秘密を教えるよ」

 感情の読み取れない目でそう言うと、紅夜はあたしの唇を塞いだ。


 秘密を教えてくれるという紅夜の意図を聞き返す前に、そのキスは深くなる。

 今は何も聞くなと言われているようで、あたしはそのまま紅夜の熱に身を(ゆだ)ねた。
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