ロート・ブルーメ~赤花~
「……まったく、美桜には敵わなくなってきたな……」

 諦めたように息をつくと、そのまま顔が落ちてきて唇が触れた。

 すぐに離れたけど……。


 こういう風にさりげなく当然の様にキスしてくる紅夜にこそ敵わないよ……。

 ドキドキする胸を押さえ、目の前の花と同じように赤くなりそうな頬をうつむいて隠した。


「さ、そろそろ出よう。このライトの明かりもあまり長いと花に良くない」

 そう言ってうながされ、あたしは最後にもう一度だけ赤い花弁を見る。


 紅夜にピッタリな赤い花――ロート・ブルーメ。

 紅夜と同じ、太陽に弱い繊細な花。


 鮮やか過ぎる赤に、あたしは頭の奥の方がチリっと焼けるみたいな感覚を覚えた。


「さ、次は美玲のところだな。俺はちょっと用事あるから、しばらく美玲のところにいてくれ」

 秘密を明かしたからだろうか。

 少し前まで感じていた紅夜の緊張がなくなっていた。


「うん、叔母さんとは話したいこともあるから。それでいいよ」

 そんな会話をしながら、エレベーターに乗り込む。


 この地下には、このエレベーターと紅夜自身がいないと来れないんだな、と思いながらあたし達は地上に出た。
< 132 / 232 >

この作品をシェア

pagetop