ロート・ブルーメ~赤花~
 どういうことか分からなくても、日葵にはあたしの言うとおりに行動するしか方法が無いんだろう。

 素直に承諾してくれた。


 近付いてくる男は日葵よりもあたしを気にしているはず。

 してやられたと思っているから、あたしを注視しているはずだ。


 ゆっくり、入り口側に数歩歩く。

 男はそれを追うように動く。

 そうしたらあたしは日葵を置いて反対側に勢いよく走り出した。


 男があたしを追いかけて走り出したのを確認して、日葵に「行って!」と合図をする。

「っ!」

 日葵はすぐに反応してくれた。


 でもあたしと反対側に走り出した日葵を見て男は足を止める。


 やっぱり狙っている日葵を逃がすわけにはいかないってことか。

 男はあたしよりも日葵を追う方を優先した。


 でも、あたしもそれを予測していなかったわけじゃない。

 あたしは男が足を止めるより先に方向転換していた。

 おかげで男が日葵に追いつく前に体当たりすることが出来る。


 ――予想外だったのは、男が体当たりをする前にあたしの方を見たことだ。

 その表情は極悪な笑みを浮かべていた。

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