Present for you〜Lady side〜
「久しぶりの愛梨(あいり)……」

離さないと言わんばかりに抱き締めてくるから、彼ってキス魔じゃなくてハグ魔だったのかと思ってしまう。でも、仕事を頑張ったんだから彼女としてできることをしようと「お疲れ様」と言いながら優斗の背中を子どもをあやすように撫でる。

「そうだ!お土産あるんだよね」

急に優斗は私から離れ、持ってきたかばんの中からおしゃれな紙袋を取り出す。愛梨に似合うと想って、と微笑みながら渡してきた。

「ありがとう。開けるね?」

紙袋の中には、ブラント物の口紅が入っていた。色は大人びて艶っぽい赤だ。

「つけてあげる」

綺麗な赤に見惚れていると、横からニュッと伸びた手に口紅が攫われる。優斗を見れば口紅を手にニコニコしていた。あっ、これは拒否権ないな。

「じゃあ、お願いします……?」

「目、閉じて?」

目を閉じれば、優斗がゆっくりと私の唇に口紅を塗っていく。異性に口紅を塗ってもらうなんて初めてで、自然とドキッとしてしまう。
< 3 / 21 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop