最後の恋だと、笑って下さい。
「安倍時親。
安倍晴明の孫にして、安倍吉平の嫡男の時親。
よろしくね」

「時親、様……」

「うん。
よければ君の名前も……と言いたいとこだけど……。
女性の名前は夫と親家族にしか教えないんだったよね」

 時親は残念そうに言いながら、私にまた笑いかけた。
 そして、ひらり、と手を振り、扉に手を掛ける。

 あぁ、行ってしまう。

 時親が部屋を出て行こうとする寸前、私は。

「あの……っ!
千夏です!
私の名前……っ!
時親様、私の名前……呼んで下さい!」

 夫になるとか、そういったことは完全に無視して、私は叫んだ。
 ただ、呼んで欲しかったから。
 時親の優しい声で、誰にも呼ばれない形だけの私の名前を。
 そうすれば、私が私になれる気がしたから。

「千夏」

「……っ、はいっ!」

 時親が名前を呼んでくれたのが嬉しくて、嬉しくて。
 私は元気よく返事をして、時親へ満面の笑みを返していた────。





< 12 / 12 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

表紙を見る 表紙を閉じる
我が家も没落して、婚約者にまで捨てられて。 ほんとに私、ツイてない……。 でも、優しい双子に拾われて結婚して、甘々溺愛される日々。 溺愛され過ぎて、ちょっぴり恥ずかしいけれど、満足な生活を満喫中。 それなのに…。 どうして、今になって現れるんですか! 元婚約者!! それからかな……。 双子の溺愛に、さらに火がついた! 「お前は、誰にも渡さない。  俺達だけを見てろ」 双子の旦那様の甘い溺愛が加速する、没落姫の寵姫平安ラブファンタジー溺愛生活編。
没落姫の溺愛婚~双子の寵姫も楽じゃない!?~

総文字数/10,769

ファンタジー24ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
結婚を目の前にして、婚約者に捨てられてしまった彩希(あき)。 そのあとに拾ってくれた双子から私、しつこく溺愛求婚されているのですが……。 あまりにも甘すぎて困ってます。 誰か、仲良く溺愛してくる双子を、どうにかして下さい。 少女を溺愛したい双子と、突然の婚約破棄に傷心気味の少女の平安甘々溺愛ラブファンタジー求婚編。 続編の溺愛生活編も公開中です。
表紙を見る 表紙を閉じる
私はきっと、死ぬまで龍神の贄。 そのためだけに生きてきた贄の巫女、葵(あおい)。 そんなある日、葵はとある神様と出会う。 その人物は、皐月(さつき)。 葵が魂を捧げる龍神の息子だった──! あなたに出会って、沢山の大切なものをもらった。 「愛しい」 という当たり前の感情を……。

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop