エリート外交官の激愛~秘密の一夜で身ごもった子ごと愛されています~
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携帯電話のアラーム音で目覚めた瑞希は、敷布団に身を起こしてため息をついた。

(三年過ぎたのにまだ夢にみるなんて、我ながらなんて女々しい……あ、私は正真正銘の女だった)

二十九歳になった今の瑞希に恋愛している暇はない。

母であり父親役もやらなければならないため、女らしさをつい忘れる時がある。

肩下までの黒髪の寝ぐせを適当に撫でつけて隣の布団を見る。

まだぐっすりと夢の中にいるのは、二歳のひとり息子、海翔(かいと)。

幼児らしい丸い顔の頬はふっくらとして、さくらんぼのような唇は半開きだ。

睫毛は長めで可愛らしく、女の子と間違えられる時もある。

卵形のフェイスラインの瑞希は二重の目も睫毛の長さもごく普通なので、息子と似ている部分を探すのは難しい。しいて言えばちょこんと控えめな鼻だろうか。

未婚でこの子を身ごもりその経緯に懺悔の気持ちはあっても、産んだことに一切の後悔はない。

(大切な命。どうしても産みたかった。この子に会いたかった。なにも知らない布施さんには申し訳ないけれど……)

暑かったのか、海翔のタオルケットと毛布は畳の上に押し出されている。

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