エリート外交官の激愛~秘密の一夜で身ごもった子ごと愛されています~
 毎日、瑞希のお腹を撫でて『父親の声を覚えてもらわないと』と声をかけ、胎動を感じれば喜んで無事に生まれてくるようにと祈り……。

 生まれたのはパリの産院で。

 夕方に陣痛がきて、海翔をシッターに預けてから瑞希は産院に行った。

 まだ帰っていなかった潤一に電話したら、すぐに駆けつけてくれてずっと背中や腰をさすって励ましてくれた。

 生まれたのは深夜で、潤一が感動して泣いていたのを瑞希は思い出していた。

(潤一さんにとって、赤ちゃんの育児は初めて尽くしだもの。構いたくてしょうがない気持ちはわかる。海翔の赤ちゃんの時は存在さえ教えていなかったから、可愛い時期を見せてあげられなかった。申し訳ない)

「お父さん、帆香のよだれがワイシャツにつくよ」

 ソファからそう言ったのは、海翔だ。

 海翔は七歳で小学二年生。

 フランス語の習得のためにと、日本人学校ではなくパリの公立小学校を選んだ。

 そのかいあってか、今は日本語と同じくらいフランス語を話せるようになった。

 学校の成績も優秀で、海翔は頭脳も父親に似たようだ。

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