僕の歩く空
秀司はニコニコしながら、小声で言った。

「俺、美香とっぴ。」

俺は心臓がチクッとした。

秀司にそれを気付かれないようにするためか、分からないが、俺はすぐにこう答えた。

「無理だろ。」

「え、何で何で、美香いいじゃん、あいつかわいいし、色白な肌がたまんないのね。」

俺は秀司の言ってる言葉が不快だった。
そして嘘をついた。

「バカ、あいつ病気なんだよ。」

秀司は目を丸くして、俺を見た。
その目は、俺を信じていて疑っていなかった。

「なんの?」

「いや、治らないやつらしいよ。」

秀司はまだ聞いてくる。

「ガンとか?」

「病名は忘れたけど、俺隣の席じゃん、だからたまに話すんだよ、色々と。まぁ、病気の話はだいぶ前に聞いて忘れかけてたけど。」

俺は嘘がうまいのかへたなのか、とにかく秀司は信じきっていて、ガッカリしていた。

「はぁー、そっかぁ。まぁ、俺も美香と話したことすらねーし、でも病気なら俺も諦めるよ。」

俺は安心した。
何か、嫌だった。
不思議な気持ちだった。

「たかしぃ、俺じゃぁ、次の候補あんだけど!」

切り替えの早い奴。

俺は鼻で笑う。
こいつマジ憎めない。

「誰よ。」

「ふふーん、りえちゃんなのねー。」

「?」

誰の事か分からなかった。同じクラスに里恵子ならいるけど、相手じゃねーし。
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