最初のものがたり
なんかムカムカしてふくれる私に、
笑いながら先を歩く。

途中、校舎や階段で生徒とすれ違う。

女の子達が私達を見てヒソヒソ話したり、
悲鳴をあげたりしてる。

ショックを受けて座り込んだり、
泣いてる子もいた。

なんだ、これは。

え、まさか、いや、ないか。

でも、この反応は。

「工藤くんってさ、モテるとか?」

聞いてみた。
振り返って真顔になる。

「ねぇ、木下さん?俺をどう思う?」

ちょっとキメ顔をする。
ジックリと見てみた。

うん、確かに整った顔立ちだとは思う。

瞳は茶色でくっきり二重。

笑うと目尻が下がって幼く見える。

髪もサラサラで太陽に透けて、
金の糸みたいにキラキラしてる。

その髪が眉にふんわりとかかって、
上目遣いに覗くと猫みたいだ。

背も高いしスタイルもいいんだろう。

確かに、怒ってる顔も、
あの子達の言う通り凛々しく見えるかもね。

カッコいい部類なんだと、思う。

だけど、こういうのって好きずきだよね。

その外見を持ってしても、
内面の酷さを補えてない。

「言っていいの、本当に」

優しく笑って私を見る。

「妹に愛嬌とコミュ力を、
全て持っていかれた可哀想な子かな。
でも、陰気野郎ではなかった。
感情もありそうだし。安心したよ」

笑顔が一瞬で崩れまた私を睨み、
そのまま前を歩いて保健室に向かい出す。

「ごめん、ごめん、外見の事でしょう。
整ってるなって思うよ。
好きずきだけど、
工藤くんみたいな顔立ちが、
好きな子も多いのかなって。
だからモテるんだよね。
さっきから、女の子達、注目してるもんね。」

不満そうに私を見る。

「フォローするみたいに言うな。
別に木下に、
俺の外見を褒められたかった訳じゃない。
でも女はみんな俺が好きなんだよ。
ほっといて欲しくても関わろうとする。
怒っても無視しても喜ぶ。
だから俺は女が嫌いなんだ」

思いっきり引いた。

ドン引きだ!

やっぱり

「中2病か」

立ち止まって保健室のドアを開け、
私を押し込む。

「くだらねぇ事言ってないで、
ちゃんと手当てして来い」

そう言って体育館に戻って行った。

「どうしたの、ケガ?」

保健室の先生に声をかけられ、
手首のテーピングを替えてもらった。

「ねぇ先生。
この学校に超モテモテで、
女の子がほっとかない子っている?
怒っても無視してもあきらめずに
関わりたくなるような人」

先生はにっこり笑って言った。

「あー工藤くんでしょ。1年生の。
入学前から噂だったよね。
知らない子いないんじゃない?
実際、かわいいしね。」

衝撃的だった。

工藤くんの言ってた事は、
勘違いとかうぬぼれとかではなかったのか。

なんで、私、気がつかなかったんだろう。

興味ないからだな。

私、ツバサくん以外の男の子は芋だと思ってるから。
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