最初のものがたり
ここは特等席だ。

誰もが座りたいでしょ、窓側、1番後ろ!

だから他の子もみんな羨ましいって言う。

まだ深く話した事のない子にも
「木下さんって窓側の1番後ろの席だよね、いいな」って言われるから。

アタリなんだ。

それにしても、
そんなに皆に羨ましがられる程、
景色がいい訳でもないけどね。

席に座ってカバンを掛ける。

ポケットに軽い振動を感じて
スマホを取り出した。

ツバサくんからメールだ。

―おはよ、なぁな、今日暇?―

思わず笑みが浮かぶ。

暇だよ、というか暇じゃなくても暇にする!

暇だよって打った所で、
椅子を引く音がした。

顔を上げて横を見るとやっぱり、
隣の席の工藤勇磨!

重だるい気持ちに襲われ、それでも。

「おはよう」

そう挨拶をした。

だけど、彼は今日も無愛想。
こちらを見もしないで

「ああ」
と答える。

はぁー。

ホント、この人陰気。

いつも暗くてなんか感じ悪い。
挨拶もできないし、話しかけても無視。
負のオーラをまとってるし、
なんか大きな壁さえ見える。

こんなにいい席なのに、なんなの、この人。

これだけはツイてない。

高校入って初めての隣の席の子だし、
仲良くしようと思ってたのに!

もう、いいや。

私は窓の外に目を向けて、
放課後、ツバサくんと会える幸せをかみしめた。

隣の陰気野郎の事は忘れよう。

おはようって挨拶は基本だよね。

人間としてどうなの?

あーイラつく。
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