社長はお隣の幼馴染を溺愛している
 ご丁寧にもほどがある。

「こっちを調査して、自分が調査されないとでも? ずいぶん、おめでたい頭だな」

 お世辞にも品がいいとは言えない姿の愛弓さんの写真は、見る人が見れば、不快なものまである。

「それはすべてプレゼントしよう。同じものをご両親と宮ノ入会長に送ってある」  
「そ、そんな……ま、待って……」
「そういえば、朝比がうっかり社内メールで、社員全員に画像を送信してしまったらしい。まあ、事故だから仕方ないよな」
「しゃ、社内に……宮ノ入会長にまで知られて……」

 愛弓さんはぺたんと床に座り込んだ。

「仕返しに、俺と志茉の写真を全社員に見せてもいいぞ。志茉に言い寄る奴が一掃できてちょうどいい」
「なにが仕返しよ! ダメージを受けるのは、私だけじゃないの!」

 いいこと思いついたみたいな顔で、要人は愛弓さんに提案した。
 でも、愛弓さんに要人の声は届いてない。

「朝比、俺と志茉の写真の画像を……」
「要人。送ったら、絶交ね」

 絶交宣言すると、要人は諦めたらしく、不満そうに頬杖をつき、肩を落とした。

「あー、朝比。その女、仕事の邪魔だから、三分以内に社長室から追い出しておけよ」
「はい」  
「手癖の悪い女だ。それと、窃盗罪で捕まりたくないなら、腕時計は返せよ」
「かっ、要人さんがどうしてそれを知っているの!?」

 愛弓さんは恐ろしいものでもみるように要人を見ていた。

「あれは特別仕様だからな」

 要人は美しい顔に、極上の笑みを浮かべ、愛弓さんにとどめを刺したのだった。
< 110 / 171 >

この作品をシェア

pagetop