社長はお隣の幼馴染を溺愛している
決められた門限
 私の友人、葉山(はやま)恵衣(めい)は昔から、面倒見が良くて美人で、学級委員長や生徒会はもちろん、教師からも頼られる姉御肌な性格だった。
 そんな恵衣と友人になれて本当によかった――と思うけど。

「はい! ここ座ってー!」

 恵衣が私を座らせたのは、湯瀬(ゆぜ)さんのお隣。
 沖重(おきしげ)グループが誇る営業部のイケメンである。

倉地(くらち)が飲みに来るなんて珍しいな!」

 湯瀬さんは人懐っこい笑みを浮かべ、メニューを渡してくれた。
 サーロイン、タン塩、カルビと並ぶけど、ここはみんなで食べられる特盛セット。それから、豆腐サラダなどのサブメニューも忘れずに頼む。

「焼き肉だったので」
「あはははっ、倉地は正直だなあ。いいよね。がっつり食べる女の子って」

 さすが営業部のエースだけあって、湯瀬さんは私のような女子に対しても、上手に対応できるスキルを持っているようだ。

「湯瀬さん。志茉(しま)を誘う時は、焼肉か寿司ですよ」

 なんのアドバイスなのか、恵衣は得意げな顔で笑いながら、湯瀬さんに言った。
 
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