社長はお隣の幼馴染を溺愛している
「秘書課って、どなたの秘書になられるのかしら?」
「私の希望は社長なんですけど、お仕事の邪魔になるって言われて、困ってるんです」

 社長とは、つまり要人の秘書。
 女子社員の鋭い視線が、愛弓さんに向けられた。
 でも、愛弓さんはまったく気にしていない。

「お二人ともモデルみたいにスタイルがよくて、綺麗ですね」

 恵衣はお得意の受付嬢スマイルを浮かべ、崩さない。

「二人とも男子社員から人気あるよ。葉山は受付で、倉地は経理課にいるんだ。わからないことがあれば、聞くといいよ」
「お仕事、できるんですね! 愛弓、働くの初めてなんです。お二人に負けないよう頑張りますね~! それで、湯瀬さんって~」 

 私たちに興味はないとばかりに、愛弓さんは湯瀬さんのほうを向く。
 湯瀬さんを見ると、手でさりげなく、私たちにここから、離れるよう合図していた。

「遅刻すると困るので、失礼しますね」

 恵衣と私は、湯瀬さんを生け贄にして、その場を離れた。

「志茉。あの手の女子は危険よ」  
「危険!?」
「狙った獲物は、どんな手段を使っても仕留めるハンター女子!」
「ここはジャングルですか?」
< 51 / 171 >

この作品をシェア

pagetop